
ソニー時代に芽吹いた原点、「放浪と技術」から生まれた「窓」
ソニーに在籍していた約20年の間に、今の事業の原型となる構想が生まれました。僕は子供のころから、国内外を旅していました。会社に入るときには「もうこういう生き方はできないんだろうな」と思ったのを覚えています。でも、大学では通信や無線伝送の研究をしていて、Wi-FiやBluetoothのような技術の基礎を学んでいました。つまり、デジタルのど真ん中をやっていたんです。ただ、自分の本質はすごくアナログで、放浪者的な感覚を持っている。その両面を掛け合わせて、新卒でソニーに応募したときのエントリーシートには「デジタル技術で世界中の人々をつなぐ”窓”のようなものを作りたい」と書きました。大学生のときに描いたアイデアをそのままソニーに持ち込んだんです。そして、入社2年目のとき、当時CEOの出井伸之さんが立ち上げた「ソニーユニバーシティ」という社内制度に応募しました。これは、インターネット時代に対応する非連続な事業を公募する制度です。僕は選抜された35人のうち最年少の23歳で選ばれ、大学時代のアイデアを改めて練り直し、「窓」の原型を発表したんです。当時は「5年くらいで形にできるだろう」と思っていました。でも現実は、なかなか前に進めなかった。(中略)
CxOキャリアを目指す人へのメッセージ
自分がCxOの世界に飛び込むときは、いわゆるファーストペンギンのようで、正直とても怖かったです。20年かけてようやく踏み出した感じです。ソニーの中から飛び出すことも相当しんどかったですし、みんなに「どうぞ」と言えるほど気楽ではありませんでした。でも、その20数年間を通して感じるのは、大きな方向性は確実に変わってきているということ。僕らが小さな「穴」を開けていくことで、そこから確実に光が差し込むような、そんなタイミングに今、近づいていると思います。こういう思いを持った人たちが、出る・出ない、やる・やらないという二択ではなく、お互いに繋がって、サポートし合いながら、新しいチャレンジを一緒に進めていく。そんな動きが、これからの1〜2年で加速すると思います。