パネラー
武田和能様(ソニー銀行本店営業部 コンサルティングプラザ室長)
御法川雄司様(千葉銀行デジタル戦略部 業務改革グループ 調査役)
司会:中静道子(MUSVI株式会社執行役員 広報・マーケティング担当)
目次
みなさまこんにちは。MUSVI株式会社の中静と申します。MUSVIはソニー出身のエンジニアが独立し、2022年に創業した会社です。テレプレゼンシステム「窓」という、次世代の遠隔コミュニケーションデバイスを開発・販売しています。「窓」は、遠隔コミュニケーションでありながら臨場感があり、リアルに会って話しているような今までにない体験価値を創出するプロダクトです。
本日はソニー銀行様と千葉銀行様をお迎えし、金融機関における「窓」の導入事例や取り組みについてご紹介いたします。今後の店舗戦略や支店・営業所におけるお客様とのコミュニケーション、拠点間のコミュニケーションなど課題をお持ちの方に少しでもお役に立てれば幸いです。
ご一緒していただくのは、ソニー銀行本店営業部コンサルティングプラザ室長の武田様、千葉銀行デジタル戦略部業務改革グループ調査役の御法川様です。申し遅れましたが、私はソニーの金融グループ出身で、進行を務めますMUSVIの広報マーケティング担当の中静です。どうぞよろしくお願いいたします。
リテール金融をめぐるコミュニケーション課題
当セミナーの構成ですが、パートとしては4つあり、3番目のソニー銀行様、千葉銀行様での活用事例をメインにゲストのお二方とパネルディスカッション形式で進めてまいります。
「窓」の活用事例の前に、まずは「リテール金融をめぐるコミュニケーション課題」について少しお話させていただきます。
金融機関を巡る環境は、大きく変化しています。店舗はお客様との接点であり競争力の源泉ですが、その前提も大きく変化しています。まずお伝えしたいのは、多様化する店舗の形態についてです。デジタル化・効率化の後押しもあり、いわゆるフルバンキング型の店舗のあり方が見直され、ターゲットとなる顧客や業務内容、店舗のタイプによってその形態が多様化しています。
多様化の中で、お客様とのコミュニケーションも変化しています。店舗戦略の変化の中で、いかにお客様との接点を持ち続けるかは、今後新たなテーマになっていくと考えています。
次に、MUSVIの「窓」を活用した金融サービスについてご紹介します。
「窓」はソニーでの研究開発に基づき、開発された遠隔コミュニケーションのデバイスです。双方向の同時発話が可能で、ハウリングや音声の途切れはありません。環境音をノイズとしてキャンセルすることなく、気配も伝わり、まるで相手と同じ空間にいるような感覚を提供します。ディスプレイも等身大で、“ほぼリアル”に対面しているような感じです。これが、顔を中心に映像・順番に会話を行っていくオンライン会議システムと異なる点です。
本格的に事業を展開し始めて2年程が経ちますが、導入事例は多岐にわたります。
特に多いのは「オフィス・現場」ですが、中でも建設現場やコンビニのバックヤード、銀行・証券など金融での導入が拡大しています。
特に、人材の最適配置や移動にかかる時間・負担が課題となるような職場・現場で導入が進んでいます。その背景には人手不足・採用難、専門知識を持つ人材の不足、働き方改革などがあるのではないかと考えられます。「窓」をとおして相手の様子がよく分かるので、一体感・安心感を求めるユーザー様も多くいらっしゃいます。お客様との信頼関係を大切にする金融機関で導入されているのは、この点を高く評価いただいているからこそではないでしょうか。
金融機関での「窓」の主な導入パターン
パネルディスカッションでお話を伺う前に、金融機関での「窓」の主な導入パターンについてご説明します。
導入パターンは主に5種類あります。まずご紹介するのが、支店と本社を繋ぐパターン。千葉銀行様やソニー銀行様も本社と支店を繋いで、お客様からのリモート相談に活用いただいています。次は、支店間を繋いだパターンです。その中のバリエーションの一つとして、支店とその周辺にある営業所を繋ぐパターンも考えられます。次はコワーキングスペースです。銀行の再編・合併などによって生じた空き店舗を。コワーキングスペースなどに転用した際にも「窓」は活用されています。
千葉銀行様やソニー銀行様もリモート相談に活用いただいているということで、支社と本社を繋ぐパターンに当てはまると思われます。お客様とのコミュニケーションに使う点では、難易度が一番高そうだと考えられるため、後ほど具体的にお話を伺います。
パネルディスカッション ~千葉銀行様とソニー銀行様での活用事例
千葉銀行様とソニー銀行様の関係については、2022年にデジタル分野での協業ということで、業務提携を締結されています。業務提携の前から「窓」の導入についても検討いただきまして、大変ありがたく思っております。では、具体的にご質問してまいります。
「窓」の活用方法や設置場所について
「窓」をどのように活用されているか、設置場所や活用方法を教えていただけますか。
ソニーの直営店「ソニーストア」の銀座店・大阪店に専用ブースを設置し、ソニー銀行本社との遠隔相談を行っています。大阪店においては、イベントスペースを隣接している関係で音声マスキング機能を活用し、音量ボリュームにも配慮しています。
千葉銀行での活用をご紹介する前に、千葉銀行がリモート手続きを実現できるまでの歴史を簡単にご説明します。2019年以前は、個人のお客様への窓口業務はすべて紙で行っていました。リモート手続きを実現するために、まずはタブレット端末で店頭におけるお客様の各種手続きをペーパーレス化しました。そして、次に後続業務のペーパーレス化を行いました。そして後続業務のペーパーレス化により、検印を中心とした業務の本部集約が進みました。検印の本部集約化は2022年10月から開始し、ちょうど先月9月に全店展開が完了しました。
余談ですけれども、本部集約のメリットは3つあると思います。1点目は、慣れたスタッフが担当することによって検印業務自体のスピードが速くなりました。2点目は、店頭の検印業務はどうしても業務量に繁閑がありますが、検印業務を本部集約することによって空いた時間に他の業務も行うことできるようになりました。3点目は、担い手の変更があります。店頭では検印業務を含め様々な業務に対応しており、検印者の業務は難易度が高いのですが、本部集約したことで業務は検印のみとなり、難易度が高くなくなり、ローコストオペレーションを可能にしました。
ようやくここで「窓」が登場するのですが、昨年11月から浜松町支店・水戸支店で窓口のローテラーを0人とする法人特化型店舗を開始しました。これらの店舗には営業融資担当者のみを配置しています。基本的には来店予約制とし、お客様がいらっしゃった際に融資担当がリモートブースにご案内し、手続きも本部で実施いたします。営業店でしっかりとしたリモートブースを作っており、「窓」を利用しております。
ネット銀行様と地方銀行様という違いはありますが、いろいろな経緯を経て導入し、お客様に配慮して使ってくださっていると感じました。
続いて、抱えていた課題や導入経緯のポイントについて、ソニー銀行の武田様からご紹介いただけますでしょうか。
抱えていた課題や導入経緯について
私たちがMUSVIと実証実験を始めたのは、2020年というまさにコロナ禍の中で、これまで通りのコミュニケーションが実施できなくなったタイミングでした。コンサルティングプラザではもともと対面で相談業務を行っていましたが、お客様と従業員双方の感染防止対策の観点から、遠隔でも対面と同等のサービスを提供したいと考え、MUSVIとともに「窓」の実証実験を開始しました。
法人特化型店舗を開設する際、「職員がいなくて大丈夫なのか?」という懸念が銀行内にありました。その中で必要なのは、単なるテレビ会議システムではなく、本当に人がそこにいるようなコミュニケーションだという結論が出ました。そのタイミングでソニー銀行様との提携の話があり、ソニー銀行様が先行して「窓」を導入していると知ったのです。実際に使用する様子を見学して、お客様にも安心していただけそうだと感じたため導入に至りました。
両行の提携のタイミングも非常に大きかったのですね。
「窓」の導入の決め手や評価したポイントについて
3つ目の質問ですが、「窓」の導入の決め手や評価したポイント、特に良いと思われた点を武田様からお伺いします。
私たちソニー銀行は店舗を持たずにサービスを提供しています。「窓」があれば店舗での対応と同等のサービスを、省スペースで提供できる点が魅力です。店舗を持たない私たちとしてはお客様との接点として活用できるのではないかと評価し、導入に至りました。
コロナ禍の前と後で、ソニー銀行様は「窓」の活用の仕方の変化はありましたか?
大きな変化はないと思います。しかし、ソニーストアに「窓」を設置しているため、コロナ禍のように外出に制限がある状態だと、お客様が店舗に立ち寄るハードルは高かったのではないかと感じています。規制緩和後には、お買い物や通勤などのタイミングでソニーストアに立ち寄り、相談する方が増えていると感じます。
引き続きご利用いただいているということですね。ありがとうございます。続いて、御法川様お願いします。
「窓」を実際に使ってみて気づいた評価のポイントは2つあります。まずは双方向のコミュニケーションです。通常の業務はオンライン会議システムで進めていますが、どうしても時折タイムラグが発生したり、十分なコミュニケーションができないこともあります。対して「窓」は本当に自然なコミュニケーションが可能です。2点目は映像の精度が高く、手続きの中でお客様にご理解いただけているかどうか反応を判断しやすいこと。実際に本部で手続きをしている職員も、非常に評価している点です。
少し補足させていただきますと、双方向のコミュニケーションが自然に実現できるのは、ソニーで長年培ってきた「ステレオエコーキャンセル技術」に負うところが非常に大きいです。ハウリングや音の途切れが発生しづらいのもこの技術のおかげで、その部分を非常に評価いただけていることがわかりました。
導入後の効果について
続いて、導入後どのような効果があったかということで、お客様や社内の反応についてお伺いしたいと思います。御法川様、お願いいたします。
当初の導入目的であったお客様の心理的な不安を払拭するには、十分な効果がありました。実際にリモート手続きを利用されたお客様には「開始前は不安があったものの、リモートでも全く問題なく手続きできて安心しました」というお声をいただきました。また、「窓」を設置した浜松町支店と水戸支店が、窓口のない法人特化型店舗として機能していることから、今後も法人特化型店舗を展開していくための検討を進めています。現在は個人の新規口座開設や諸届の名義変更などの事務手続きを中心に活用していますが、それ以外の業務にも活用の幅を広げられるのではないかと検討を進めております。
ソニー銀行のコンサルティングプラザでは資産運用や住宅ローンのご相談を承っています。もともとオンラインでの相談業務も実施していますが、お客様によってはWeb上でのご相談に不安や抵抗がある方もいらっしゃいます。「窓」を通しての相談業務は、そのような方に対してのニーズにも対応できているのではないでしょうか。実際に利用されたお客様のうち、9割の方から相談の品質に関しては高い評価を得られています。お客様から対面の相談と同等の高い評価をいただけているのは、すごいことではないでしょうか。
今後の展開、ご意見やご要望について
貴重なお話をありがとうございました。最後に、将来の展望や今後の展開、ご意見ご要望についてお伺いしたいと思います。
店舗業務のローコスト化はとても重要テーマです。銀行において店舗を維持するのは非常にコストがかかります。一方で、顧客体験の向上や顧客満足度の向上も重要なテーマです。私たちは、一見相反する2つの点を実現するための一つの施策として、「窓」を活用しています。水戸支店や浜松町支店では「窓」を設置する前提で店舗設計をしていますが、今後、既存の店舗で「窓」を設置するには、スペースや間取りの問題が存在します。「窓」の良さを活かしながら、もう少し小さなサイズもぜひ開発してもらいたいです。そうすることで今後、他の店舗での導入も検討できるのではないでしょうか
私たちは店舗を持たない、千葉銀行様と真逆の形態の銀行です。今後、相談スペースを増やしていくには、非常に小さいサイズのものや、音漏れへの配慮がされたものがあるといいですね。MUSVI側とも議論しながら「窓」がよりよいものになっていくことを望みます。
貴重なご意見、どうもありがとうございました。いただいたご意見は開発チームにもフィードバックして、良いものを提供できたらと思っております。
また、以前からお客様のご要望の多かった「コンテンツ共有機能」について、来春をめどに金融機関向けの相談パッケージとして提供できるよう準備しております。今回先行展示を行っておりますので、お時間のある方はぜひブースにお立ち寄りください。
今回のセミナーでは「多様化する店舗の形態」についてお話しました。金融サービスの提供において、豊かな顧客体験とコスト面のバランスを考えるのは非常に難しいことですが、解決策の一つとして、私たちMUSVIがお手伝いできれば幸いです。
今後もAIの活用など検討が必要なテーマはさまざま存在しますが、ソニー銀行様と千葉銀行様を担当している我々の販売パートナーであるSREとも連携し、いろいろな形で提案させていただければと考えています。引き続きご関心をお持ちいただけますと幸いです。
短い時間でしたが、ソニー銀行の武田様、千葉銀行の御法川様、誠にありがとうございました。
以上で終了させていただきます。皆様、本日はどうもありがとうございました。
セミナーの動画はこちら