2022年度香川県・東京藝術大学連携事業である「瀬戸内海分校プロジェクト」で「窓」をご活用いただき、このたび「海は人を愛する『さと⇄うみ』展 Project Archive」に掲載いただきました。
8月のリサーチ編では、濃密な1週間を過ごしました。藝大を卒業した同世代の作家である伊東五津美さん、鉾井喬さんと初めて一緒に展覧会をつくる機会に恵まれたことはとてもうれしく、大きな刺激を受けました。そして、高校生たちと一緒に多くのことを学びました。歴史と文化、海の生き物のすがた、人間が環境に及ぼす影響、波の音、吹く風の匂い……。行く前に漠然と抱いていた穏やかな海のイメージは打ち砕かれ、混沌とした表情に変わり、到底扱いきれないテーマとして心に刻まれました。
また、このとき出会ったのがテレプレゼンスシステム「窓」でした。離れた相手に気配まで伝える技術として、香川大学はすでにこのシステムを導入し研究に活用されていました。この装置を媒介させることができるなら、インターネットを使いこなすデジタルネイティブ世代のみんなと新しい挑戦ができることを直感しました。「居場所の制約にとらわれない便利で快適なシステムは、芸術作品としても機能してくれるだろうか。」その問いに答えを出すための制作編は、本当に時間との戦いでした。
上演を目前に控え、自然にも翻弄されました。「窓」を海辺に設置して入念にテストを行い、天候を祈るばかりでしたが、いざ本番というオープニングの週末に寒波が直撃し、やむなく室内上演に切り替えました。12月の海のリアルです。翌週、晴天に恵まれ無事にさと⇄うみ をつなぐことができたのは幸運でしたが、来年に向けての課題を痛いほど認識しました。
最後になりましたが、ご尽力いただいた香川大学の永冨先生、柴田先生、香川県職員の皆さま、「窓」をご提供くださったMUSVI株式会社の皆さま、香川での通信をフルサポートしてくださった株式会社ドコモビジネスソリューションズの皆さま、本当にありがとうございました。そして、リサーチとワークショップからこの作品を作り上げた、素晴らしい参加者の一人ひとりに、心から拍手を送りたいと思います。
(東京藝術大学 社会連携センター 特任助教 坂田ゆかりさん)
出所:「さと⇄うみ」展 Project Archive