なぜ「公認会計士資格スクール」が「窓」を導入したのか

距離の制約を超えて、人と人、人と空間をつなぎ、あたかも同じ空間にいるような自然なコミュニケーションができる、MUSVIのテレプレゼンスシステム「窓」。その導入の輪は、業種・業態や規模を問わず、様々な企業・団体へと広がってきています。

今回お話を伺ったのは、MUSVI設立後、初めて「窓」を導入いただいたCPAエクセレントパートナーズ様。公認会計士資格スクール「CPA会計学院」を運営するほか、会計人材特化型のEラーニングプラットフォーム「CPAラーニング」、会計人材特化型の人材紹介サービス「CPASS CAREER(シーパスキャリア)」などを通して、世の中の会計リテラシー向上と会計人材の生涯支援に取りくまれており、会計を軸に多様な事業を展開されています。

社内メンバー間のコミュニケーション活性化や一体感の醸成を目的に導入した「窓」について、現在の活用状況、そしてこれからの活用計画を伺いました。

【今回お話を伺った方々】
CPAエクセレントパートナーズ株式会社
取締役/博士(人間科学) 宗澤岳史さん
人材採用担当/人事部/戦略人事チーム 清水瞳さん

導入の決め手は「MUSVIメンバーの好奇心と熱意」

「窓」との出会いのきっかけ、導入の経緯について教えてください。

宗澤 ソニー出身のエンジニアで、MUSVI執行役員の見山さんに紹介していただいたのが最初でしたね。見山さんと私は前の会社で同僚だったのですが、私が当社に転職したタイミングで、ソニーグループの研究開発組織・R&Dセンターが手がける様々な取り組みについていろいろと聞かせていただいたのです。その中の一つに「窓」がありました。

清水 その後1年ほど経ってから、拠点間のコミュニケーション不足を解消する手段として、「窓」の導入を決めました。

弊社・CPAエクセレントパートナーズ(以下、CPA社)は、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」を中心に、会計に関わる様々な事業を展開しています。旗艦校の新宿、早稲田、水道橋、日吉、そして大阪の梅田に拠点があり、「窓」は新宿校と大阪梅田校(以下、梅田校)の2拠点間をつないでいます。

弊社はメンバーの人数が増えるにつれて、大抵のことはオンラインチャットで端的にやりとりして業務を推進する「チャット文化」が根付いていったのですが、それゆえにお互いのことを知り合う・理解し合う機会を持ちにくいという課題がありました。

特に梅田校との間には物理的な距離がありますし、関東の拠点と交流する機会を積極的に設けているかというとそうではありません。関東の拠点のメンバーの中には梅田校に一度も行ったことがない人が多いし、会う機会は全体会議や一部の部門の研修などとごく限られています。同じ会社のメンバーでありながら、何となく“チーム大阪”と“チーム関東”で分かれてしまうような雰囲気がありました。

今後も事業の拡大に伴い、新しいメンバーがどんどん加わる中、お互いに顔も名前も価値観もキャラクターもわからない関係性の人が増えていくことで、拠点間・部門間の心理的な距離がますます広がっていってしまう懸念がありました。

この心理的な距離を埋め、一体感を醸成するためのコミュニケーションに、宗澤がかねてから知っていた「窓」が使えるのではないかと、導入に向けた話が進んでいきました。

あえてお伺いするのですが、メンバー同士の交流や連携、一体感の醸成というのは、御社にとって必要なものでしょうか? 業務を推進する上では、それらは必須ではないという考え方もあると思うのですが…。

清水 弊社の理念にも関わるのですが、メンバー同士の交流や連携は非常に重要なものだと考えています。

私たちは「CPAは人の可能性を広げ人生を豊かにする応援をします」という理念を掲げているのですが、会計学院の受講生をはじめ、弊社に関わるすべての方々の可能性を広げていくためには、まずメンバー同士がお互いの可能性を広げていく関係性にあるべきだと考えています。それぞれの価値観やキャラクターを知り、どんな可能性を伸ばしたいと願っているかを理解する。そして相手がそれを実現するために、自分に何ができるのかを考える。メンバーみんなで、この基本姿勢を身につけることが大切です。

弊社は、総勢約120人、そこにチューター(※注)を含めると200人を超える(2023年1月現在)所帯の企業ですが、できれば全員がお互いの顔と名前、価値観・キャラクターを把握できている状態になるのが理想と考えています。
※注:CPA社では、前年度の公認会計士試験合格者がチューターとして全校舎に常駐しており、受講生の学生に関する様々な相談に対応している

オンラインチャットは、雑談を含むちょっとしたコミュニケーションをとって、互いを知り合う・理解し合うには不向きだと感じます。「実は最近、こういうことができるようになったんだ」「もっと、こんな可能性を伸ばしていきたいんだよね」といった気楽な会話も自然にできる雰囲気を何とか醸成できないか――これが、人事部門としての目下の課題でした。

社内のコミュニケーション課題を解決する手段を模索する中で、「窓」と他のサービス・ツールを比較検討されたことはありましたか?

宗澤 既存のビデオ会議システムで事足りるのではないかという意見はもちろんありましたし、「窓」と近しい機能を搭載したツールが存在することも認識はしていました。でも、見山さんのお招きで、弊社のメンバー数名でデモを見たり、開発メンバーのお話を伺ったりしてからは、選択肢は「窓」一択になりました(笑)。

何に惹かれたかというと、「窓」に関わる「人」でした。

「窓」の機能やそれを支える技術に関しては、私たちは専門外です。もちろん卓越した技術が搭載されているのでしょうが、それが他社と比べてどれだけ優れているかは正直なところわからない。その差異を見極めようとすることには意味がないと思いました。

それよりも、「窓」をつくった人たち、関わっている人たちの熱意に共感したんです。語弊を恐れずに言えば、“オタクっぷり”に魅力を感じたというほうが正確かもしれません。

MUSVI代表の阪井さん(当時はソニー R&DセンターのシニアUXプランナー)が、もうひたすら喋るんです。会議室に向かうエレベーターの中から、エントランスで別れるその瞬間まで。別れ際なんて「ああ…まだ喋りたいのに」という空気がひしひし伝わってきました(笑)。

私はもともと大学の研究者だったこともあり、阪井さんほどではないにしろ、一つの物事について考えを深めていくということには多少経験があります。物事を究める人たちの好奇心と熱意、それに突き動かされて生まれるアクション。これによって人類は進化し、私たちは現在の便利で豊かな暮らしを享受できています。

世の中を変え得る、異常なまでの好奇心と熱意。阪井さんをはじめとする「窓」の関係者に、その一端を垣間見た気がしました。

導入から半年、いよいよ本格活用のフェーズへ

現在、「窓」をどのように活用されているか教えてください。

清水 冒頭にお話ししたとおり、新宿校と梅田校の2拠点をつないでいます。音声・映像は常時接続の状態です。時々「窓」を移動させて、最適な設置場所を探しているところです。いま新宿校では、執務エリア内の、コーヒーを淹れたり、ちょっとした立ち話をしたり、宅配便で届いた荷物を一時的に置いておいたりする、日常的に人が行き来するスペースに設置していますね。

導入初期のメンバーの反応は、興味半分、警戒心半分という感じでしたね。「見慣れないものが入ってきたぞ」とワイワイする一方で、「常に誰かに見られている、監視されている」と感じてしまう人もいたようです。

それが約半年経って、ようやく「窓」の存在や、拠点間がつながっていることに慣れてきたと思います。「窓」の向こうで誰かが動いている気配を感じたり、ふと「窓」のほうを見て「あ、〇〇さんだ」「〇〇さん、今日は眼鏡なんだな」「おや、誰の声だろう?」「みんなで何を話してるんだろう?」などと思ってみたり。「窓」でつながる日常が、自然なものとして受け入れられつつあると感じています。

ただ、日常に溶け込みすぎて、もはや“風景”のようになってきているきらいもありまして…。「窓」をまったく気に留めず、素通りしてしまうメンバーも少なくありません。「窓」の前に自然に人が集まり、コミュニケーションが生まれるような仕掛けが必要になってきています。「窓」を本格的に活用するフェーズに差し掛かっていますね。

 

設置場所を定期的に変えてみたり、メンバーの「窓」への関与度を高めたり、「窓」の向こうとのコミュニケーションのきっかけをつくったりする、「窓守り(まどもり)」の活動が必要になってきているのですね。

宗澤 まずは、より多くのメンバーが「窓」に触れるよう促していく必要があると感じています。リモコンの基本的な操作方法を知らないメンバーも多く、その状態だと、積極的に「窓」に関わりづらいと思うんです。使い方を理解した上で、こうやって使うと面白いという実感を持ってもらう。半ば強制的にでも(笑)、そういう機会をつくっていくのが活用推進の第一歩だと思っています。

清水 活用を本格化していくにあたっては、社内メンバー同士だけでなく、社内と社外をつなぐことにも関心があります。もともとは社内コミュニケーションの活性化を目的に導入しましたが、社外の方とのコミュニケーション機会を増やすことにも「窓」が活用できるかもしれません。

というのも、先日MUSVIさんご協力の下、新宿校と他の会社の「窓」をつながせていただく機会がありまして。「窓」のネットワークの中にいる面白い企業・人とのコミュニケーションが、当社メンバーに刺激や気づきをもたらすことにつながると感じました。

宗澤 社外とのつながりを求める背景には、切実な危機感があるんです。弊社の事業は「会計を教える人」と「会計士を目指す人」の間で完結しており、関係者が固定化しています。こうした私たちのような企業は、世の中一般の動きに鈍感になりがちです。

また、教育事業にありがちな悩みだと思うのですが……ともすると他者に対して“上から目線”になりがちな側面もあります。自分は「教える」立場であるという認識から、知らず知らずのうちに「自分は他者よりも優れている」と思い込みやすい環境にあるのです。

しかし当然ながら、それは勘違いです。世の中には自分たちよりも優れた人がたくさんいますし、閉じた世界に安住していると自分たちの成長・進化が止まっていることにも気づけません。まさに井の中の蛙状態です。そのリスクに意識的にならないと、「人の可能性を広げる」という理念を持つ企業であるにも関わらず、自分たちの可能性を狭め続けてしまうことになりかねません。

固定化しがちな環境に新しい風を取り入れ、ニュートラルな感覚を持ち続けるためには、「会計」以外の世界と広くつながることが必要なのではと考えています。これは、弊社の人材育成の鍵になるとも感じています。そのために、もっと「窓」を活用する企業が増えることを願っております。

日本全国、そして世界の会計人材がつながり合う未来へ

それでは最後に、CPA社で今後予定されている「デジタル活用」のお取り組みについてお聞かせください。

 宗澤 CPA会計学院を5拠点で展開し、自習室を多数開放していることにも表れているのですが、弊社は「リアルな場所に通っていただく」ことを他社よりも重視してきました。臨場感のある講義を受けていただくのはもちろん、講師やチューターに気軽に質問・相談をしたり、同じ会計士を目指す方同士で切磋琢磨したり…そうしたコミュニケーションも含めた体験に価値があると考えるからです。

今後は、こうした既存のリアルな拠点に加え、デジタルを活用したコミュニケーションの場を検討しています。

清水 CPA会計学院には、地方にお住まいの方をはじめ、通信講座を受講されている方も多いんです。デジタルの活用によって、そういった通信生の方にも、受講生同士のつながりをつくり、講師やチューターに気軽に質問・相談ができる環境を提供したいと考えています。

宗澤 とはいえ、「デジタル化」のために取り組むわけではありません。アナログでもデジタルでも、目的を果たすための手段・道具に過ぎない。アナログかデジタルかは気にしておらず、目的に合わせて最適解を選べばいいと考えています。

清水 また、弊社では会計人材の社交の場として、新宿校と同じビルで「CPASS LOUNGE」というリアルな空間も運営しているのですが、交流の機会を提供できるのは、ラウンジに来ることができる方だけというのが現状です。

地方や海外で活躍されている公認会計士の方や、通信講座で学んでいる通信生も多くいる中、今の「CPASS LOUNGE」だけでは不十分では?という思いがありました。

今後「窓」が日本全国、また世界に浸透していき、もし弊社の「CPASS LOUNGE」と各地の「窓」設置場がつなげるようになったら、会計人材の交流の機会をぐっと増やしていくことができそうだなとワクワクしました。

さまざまな場所、さまざまな形で会計人材が活躍している様子がより見えるようになりますし、これまでになかった交流を重ねる中で、思っても見なかった化学反応が起こるかもしれません。

会計人材の可能性を広げる企業として、やれること・やるべきことがまだまだたくさんあります。「窓」を通じて得られるきっかけや気づきを大切に、挑戦を続けていきたいですね。

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