INTERVIEW
02「働くこと」のあいだで
目次
福田裕大さんインタビュー #02
“仕事の場”という、もう一つのグランド
福田さん 東京マラソンにて
前回のインタビューから約半年。福田さんは、2月の別府大分毎日マラソンで自己ベストを更新されました。
結果だけを見ると順調に積み上げているように見えますが、ご本人としては「うまくいった」というよりも、これまでの試行錯誤が少しずつ形になってきたという実感に近いといいます。
仕事と競技を両立しながら成果を出し続ける。
その裏側には、日々のスケジュール設計やトレーニングの工夫、そしてうまくいかなかった経験の積み重ねがありました。
結果が出ているからこそ見えてきた課題や変化とは何か。第二弾となる今回は、MUSVIの御殿山本社にお越しいただき、直近のレースの振り返りから、仕事との両立、福田さんオリジナルの練習方法「ダイフクスペシャル」、そして仕事との共通点について、“仕事の場”というもう一つのグランドからお届けします。
福田さん
別府大分毎日マラソンにて
星稜高校時代に県総体で1500m・5000mの2冠を達成。その後一時競技を離れるが、金沢大学進学後に復帰し、陸上部で全日本インカレや全国駅伝に出場。卒業後は実業団に所属せず、エンジニアとして働きながら競技を続けるマラソンランナーとして活動。2025年の北海道マラソンでMGC出場権を獲得し、仕事と競技を両立する姿勢が注目されている。詳細はこちら https://yudaifukuda.com/profile
自己ベストの裏側にあった変化
結果としては自己ベストだったのですが、実はコンディションも特別良くなく、練習も十分ではなかったので、少し不思議な感覚でした。
レースの展開もかなりハイペースで、最初から「これ、もつのかな」と思いながら走っていたところ、意外と崩れずに最後まで行けてしまって。以前だったら途中で落ちていたと思うので、そこは変わってきているのかなと感じています。
自分の中では、狙って出したというよりも、これまで積み上げてきたものが自然と結果に出てきたという感覚の方が強いですね。調子が良かったというより、崩れなくなってきている感覚に近いです。タイムの捉え方も変わってきています。
東京は気温が高くて、後半はかなり厳しかったです。自分はもともと暑さがあまり得意ではないので、そういう条件になると影響は受けやすいですね。また、風や給水の影響もあって、思ったよりペースを落としてしまいました。
ただ、それでも2時間12分台でまとめられているので、ベース自体は上がっていると思います。逆に言うと、条件が悪くても一定のところでまとめられるようになってきている。まだ伸ばせる余地はあると思っているので、そこはこれから詰めていきたいですね。
福田さん 東京マラソンにて
そうですね。かなり試してきました。筋トレを強めに取り入れていた時期もありましたが、自分の場合は走る時間を増やした方が結果につながると感じて、今はかなり絞っています。また、前日に強く追い込んで、翌日も高負荷をかけるようなことも試しましたが、身体へのダメージが大きくて継続できなかったです。そういう試行錯誤を繰り返す中で、「自分に合う形」を少しずつ見つけてきたという感じですね。
あと、レース中の感覚としても変化はあって、以前は「きつくなったらどうするか」という意識が強かったのですが、今は「きつい状態でもどうまとめるか」という考え方に変わってきています。余裕がある状態で走るというよりは、ある程度きつい状態を前提にして、その中でどれだけ崩さずに走れるか。そういう意味では、耐え方が変わってきていると思います。
両立を支える「設計」と習慣
毎日が本当に刺激的ですし、コードレビューやミーティングで皆さんからいろいろな視点からフィードバックをいただいていて、成長を感じています。また、リモートで仕事させていただいているので、自分で時間をコントロールでき、競技とのバランスも取りやすいです。
もちろん、仕事として求められることはしっかりやらないといけないため、どう時間を使うかは常に考えています。仕事と競技を切り分けているというよりは、同じような感覚でやっている部分があり、「どう設計するか」という点は共通していると思います。仕事の中で考えていることが競技に活きていますし、逆に競技でやっていることが仕事にも活きています。


一番大きいのはスケジュール管理です。両立というと気合いとか根性みたいに見られることもありますが、自分としては完全に「設計」の問題だと思います。

普段のスケジュール例
朝に練習して、そのあと仕事をして、夕方にもう一度走るという流れを基本にしています。時間を自分でコントロールできる中で一番パフォーマンスが出る形を作っています。時間が限られているからこそ、どう使うかを常に考えるようになりました。
そうですね。ただ、最初からうまくいっていたわけではなくて、昔は理想を詰め込みすぎて、全然回らないということが多かったです。やろうと思うほど予定を詰めてしまって、結果的にどちらも中途半端になるという状態でした。計画通りにいかなくて落ち込むことも多かったです。
そこから、「実行できる計画を立てる」という考え方に変わっていきました。まずは回る形を作る。それを継続することで結果が積み上がっていく、ということですね。
何をやるかだけではなくて、「何をやらないか」を決めることです。 効果が高いものに絞ることを意識し、その分、やると決めたことに時間とエネルギーを使うようにしています。結果的にその方が、全体としてはパフォーマンスが上がるのではないかと考えています。
オリジナルの練習法「ダイフクスペシャル」
はい。ダイフクスペシャルはペースに強弱をつけるインターバルトレーニングで、レースのきつさを再現することを目的にしています。ただ、最初からこの形だったわけではなくて、レースの後半のきつさをどう再現するかを考える中で生まれたもので、いろいろ試した中でたどり着きました。
具体的には、最初の数本は設定より少し速めのペースで入って、そのあと少しペースを落として、また上げるというのを繰り返します。インターバルの設定の中にさらに、強弱をつけることで、きつい状態の中で速いペース帯の出力を維持しながら回復していくのがポイントです。レースでも一度きつくなったあとに、完全に楽になることはないので、その状態に近い形を作るイメージです。この練習をやるようになってから、きつくなってからの粘り方が変わってきたと思います。
そうですね。高負荷を連続でかけるような練習も試しましたが、ダメージが大きすぎて継続できなかったことから、「1回の練習の中で再現する」という発想に変わっていきました。ペースに強弱をつけることで、きつい状態の中で回復しながら走ることができます。
そうです。マラソンは一定ではなくて、ペースが揺れたり環境の影響を受けたりするので、その揺れを再現することを意識しています。また、自分の環境では長距離を管理して走るのが難しいので、レースを活用するという考えにもつながっています。
一方で、ダイフクスペシャルのような練習も大事ですが、それ以上にレースに多く出ることが重要だと考えています。実際のレースの中でしか得られない感覚は大きいですし、その経験が結果的に一番効いています。練習で再現できる部分もありますが、最終的には「レースでどう走るか」なので、そこはかなり意識している部分ですね。
特に何人かの有名なYouTuberの方々に取り上げて下さってからの広まる勢いが想像以上でした。最初はそこまで意識していたわけではなくて、「自分がやっていたことを共有してみた」くらいだったのですが、気づいたらいろんな方が取り入れてくださっていて、「やってみました!」とか「記録が伸びました!」といった反応をいただくようになりました。
自分と同じように仕事をしながら走っている方や、市民ランナーの方がそれを参考にしてくださっているのを見ると、自分だけでやっている感覚ではなくなってきて、それがまたモチベーションにもつながっています。基本的には一人で練習することが多いのですが、こういう形でつながりが生まれることで、もう少し広い意味で練習が続けられていると思います。結果的に、それが自分の取り組みを続ける後押しにもなっています。
仕事と競技に共通する考え方、そして今後に向けて
計画を立てて実行して修正するという流れは完全に同じです。ただ、一番大事なのは「実行できる計画」を立てることだと思います。
そうですね。理想だけでは回らないので、まず回るようにすることを前提に考えています。計画も分解して、日々の行動に落とし込んでいきます。
あと、仕事でも同じですが、「どこまで分解できているか」はかなり重要だと思います。
いきなり大きな目標をやろうとすると、どうしても実行に落ちないので、日々の行動に落とし込めるところまで細かく分けていく。それができているとやるべきことが明確になるので、迷わず実行できるようになります。
まずは2時間10分を切ることですね。それを一度出すというよりも、安定して出せるようにしたいと思います。
一回だけだと、条件が良かったということもあると思うので、どんなコンディションでもある程度まとめられるような状態にしていきたいです。
やはり一回の結果というよりは、再現できるかどうかが重要だと思います。これまでやってきたことも、「どうすれば再現できるか」を考えて積み上げてきたので、それをもう一段上げていきたいです。
そういう意味では、自分に合う形でどれだけ精度高く回せるかがポイントですね。大きく何かを変えるというよりは、今やっていることをしっかり継続して、精度を上げていくイメージです。
無理をしすぎないことですね。続けられる形でやるというのが一番大事だと思います。短期的に無理をすれば結果が出ることもありますが、それだと続かないので。長く続ける中で結果を出していくということを意識していきたいです。
今は大きくやり方を変えるというよりは、これまで積み上げてきたものをどれだけ安定して出せるかというフェーズに入ってきています。調子の波に左右されるのではなくて、ある程度の状態でもまとめられるようにするというのが、次の課題です。そのためにも、日々の積み重ねを崩さずに続けていくことが大事だと思います。
福田さん MUSVIオフィスにて
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