無題ドキュメント

2025年12月10日(水)~12日(金)、東京ビッグサイトにて「建設DX展 東京」が開催されました。MUSVIは昨年に続きブースを展示するとともに、「ゼネコンに聞く! 『窓』を活用した現場コミュニケーション改革」をテーマに、鹿島建設様をゲストにお迎えしたセミナーを開催しました。

本セッションでは、建設業界を取り巻く環境変化、現場事務所と詰所など離れた拠点同士をどのようにつないでいくべきかという観点から、コミュニケーションの重要性について実際の事例をもとにお話しいただき、現場や支店、DX推進部門など、コミュニケーションや連携に課題を感じている方にとって、多くの示唆が得られる内容となりました。

登壇者

PART1

建設業界を取り巻く環境変化と、DXに求められる視点

人と人の“つながり”が現場力を左右する建設業界

三木
(MUSVI)

本日は、「ゼネコンに聞く! 『窓』を活用した現場コミュニケーション改革」というテーマでお話しさせていただきます。前半では、建設業界の環境変化とDXの必要性、そしてどのように「窓」が貢献できるのかについてご説明させていただきます。後半では、鹿島建設様との本音トークとして、ゼネコンにおけるDX戦略と現場のリアルな声についてパネルディスカッションを行います。

まず、建設業界の環境変化ですが、現場の規模は年々大きくなり、それに伴って関係者が増え、多重構造が生まれています。作業内容も高度化する一方で、安全と品質への要求は高まり続けています。そのような中で、「2024年問題」に代表される働き方改革への対応も加わり、管理の難易度は上がっているにもかかわらず、現場のリソースは減少しています。

こうした状況から、生産性向上は非常に重要なテーマになっています。私たちは、そのアプローチを大きく二つに分けて考えています。一つは、現場の方が現場に張り付ける時間を最大化することです。つまり、現場でやらなくていい仕事は遠隔から支援するなどして、現場が現場の仕事に集中できる環境を整えることです。もう一つは、人がやらなくていい仕事を中心に、自動化やデジタル化を進めていくことです。
ただし、遠隔支援では「状況が分からない」「結局、移動が減らない」といった課題があり、自動化についても、建設が一点物であり天候にも左右されやすいことから、AIなどを活用しづらい現実があります。そのため、建設業界では今もなお、人と人のつながりや、情報を得る質の高さが現場力を左右しているのではないか、また、そこに「窓」が貢献できるのではないかと感じています。

続いて、國近様より、鹿島建設様におけるDXの取り組みについてご説明いただきたいと思います。

鹿島建設におけるDXと目指す現場像

國近様

私は元々現場監督を10年間やった後、建築とデジタルを掛け合わせた活動に関わっております。その中で「窓」と出会いまして、建設現場への適用を進めています。
現在、DXを推進する部署でデジタル化を進めていますが、私は、変革を起こすためには仲間が必要であり、技術だけでなく、人としても変革を起こせるようなチーム、つまり「DXは“壮大な仲間集め”」だと考えています。

鹿島建設では、2018年に「鹿島スマート生産」を打ち出し、ロボット、遠隔、デジタルを組み合わせた取り組みを進めてきました。その中で目指しているのは、「魅力的な現場」をつくることです。若い人が建設現場を働く場として選び、社員も技能者も安全で快適に働ける環境を整えていく。そのためには、省力化や効率化だけでなく、人と人のコミュニケーションを高めることが重要です。

リアルな現場での人のつながり、テレプレゼンスとしての「窓」、メタバースの活用といった要素を組み合わせながら、さまざまな形でつながる新しい現場運営の在り方を模索しています。特に、残業規制が進む中で、先輩と若手が対話する時間が取りにくくなっている現状では、デジタルを活用し、距離を超えてコミュニケーションを取れる環境づくりが現場のエンゲージメント向上につながると考えています。

PART2

パネルディスカッション~「窓」を活用した現場コミュニケーション改革

三木
(MUSVI)

ここからはパネルディスカッションに移りたいと思います。
会場に設置している「窓」は、羽田のアクセス線シールド工事事務所とつながっており、そこから柴田所長にご登壇いただきます。

柴田所長

羽田空港近くで新たな鉄道工事を担当しています。
部下が約60名、協力会社の技能者が約200名の大規模現場です。
よろしくお願いいたします。

現場と業界の変化から見える、コミュニケーションの課題

テーマ1現場・業界の変化

三木(MUSVI)現場や業界の変化について、どのように感じていらっしゃいますか。

柴田所長

私が入社した1990年代と比べると、「現場が大規模化してきたと感じます。一方で、建設業界で働く人は減少しており、1990年代と比べると約3分の2程度になっています。このような状況の中で、2024年以降、時間外労働の上限規制の適用が始まり、非常に大きな課題になっています。

そのため、移動時間による業務時間ロスの削減に取り組みましたが、朝・夕に行っていた対面での会話が減少する、ということが起きました。大規模現場であればあるほど、業務が分散化し、情報共有がしにくくなります。トラブルや事故を未然に防ぐには「風通し」をよくすることが大切ですが、そのためにはやはり対面の会話は重要です。

国近様

現場で若い社員と話をする機会がありますが、時間的な余裕がなくなっていると感じます。先輩に聞きたいが聞く時間がない、先輩も忙しくて教える時間がない、という声があります。
20代・30代が多くの仕事を任される中で、若手とベテランがやり取りする機会や技能伝承を行うシーンをどう作っていくかが課題だと感じています。
現場では臨場感を持って伝えることが非常に大事で、「窓」ですとその空気感を伝達できるのではないでしょうか。

テーマ2現場の「空気感」と「第六感」

三木(MUSVI)現場では「空気感」も重要なのですね。

柴田所長

建設現場は「生モノ」です。気候や時勢など、対応が日々変わります。中でも土木工事は自然を相手にしているため、五感、時には「第六感」をもって察知しながらモノづくりを行っています。そのため、我々幹部にとっては、タイムリーな情報収集と現場状況の正確な把握、早期のリスク回避が重要です。これは大規模になればなるほど重要な課題になると感じており、この距離感を縮めるためのコミュニケーションツールが重要になってくると思います。 
実際、部下が悩んでいるかどうかは表情を見ると分かります。これは言葉ではなく様子で受け止める部分で、「第六感」に近いものだと思っています。

国近様

現場は空気感で分かるというのは、本当にその通りだと思います。うまくいっている現場は、入った瞬間に分かります。若い人が気軽に話しかけられているか、現場がシーンとしていないか。笑顔がある現場は、安全や品質にもつながっていると感じています。
こうした空気感や対話の積み重ねが、結果として安全や品質の向上につながっていると感じています。

テーマ3「窓」導入の経緯と、着目した理由

三木(MUSVI)國近様は、MUSVI創業前から「窓」に着目されていました。その背景を教えてください。

国近様

現場には、常にさまざまな課題があります。現場に行くたびに、「何とかしたい」「もっと良くできないか」という思いがありました。2021年に、ある企業の技術研究所で「窓」を見たことがきっかけです。当時は、建設現場向けのものではありませんでしたが、人の空気感が伝わるという点に強い可能性を感じました。
建設現場では、遠隔になるとどうしても情報が伝わりにくくなります。その中で、「窓」であれば、人の存在感や空気感も含めて伝えられるのではないか。そう考え、建設現場への導入を検討するようになりました。

「窓」を活用した現場コミュニケーションの実践と効果

テーマ4「窓」の導入とその後の変化

三木(MUSVI)実際の現場では、「窓」をどのように活用されているのでしょうか。導入にあたって、苦労された点などもお願いします。

柴田所長

導入当初は、どこに設置すればよいのか分からず、試行錯誤しました。建設現場では、個人との会話よりも、会議体でのコミュニケーションが多く、これまでは、メールによる情報共有が優先されがちでした。「窓」は他のリモートツールと比べて非常に画像が鮮明で、表情も目線まで分かります。そこに目をつけまして、現在は作業間連絡調整会議の場でメインオフィスとサテライトオフィスを結ぶツールとして活用しています。

この会議では、翌日の作業内容や安全確認を行うため、関係者が内容を正しく理解しているかどうかが非常に重要になります。「窓」ですと空間が結びつき、程よい緊張感も生まれ、私の指示内容や意図をちゃんと職員に伝わっているかどうかを、その場で確認できます。確実な言葉のキャッチボールができるようになりましたので、オンライン会議で起きがちな、発言がなく「伝わっているのか分からない沈黙」が減った、という点は、実際に使ってみて感じている効果です。

テーマ5今後の現場運営と「窓」への期待
國近様

鹿島建設のデジタル推進室では、シンガポールにある技術研究所の「窓」と常時接続してコミュニケーションを取る運用も行っています。向こう側を人が通ると、笑顔で挨拶が交わされるなど、意図していなかった偶発的なコミュニケーションが生まれることがあります。こうしたやり取りは、オンライン会議を設定しないと生まれない関係とは異なり、人と人の距離を自然に縮めてくれると感じています。

柴田所長

今は「窓」ですが、将来的には「壁」、つまり空間そのものが結ばれている感覚に近づいていくと、より自然な会話ができるのではないかと期待しています。
現場としては、無理に仕組みを変えるのではなく、自然に会話が生まれる形で、現場運営を支えてくれることを期待しています。

三木(MUSVI)

ありがとうございました。本日は、鹿島建設様から、現場の規模拡大、人材減少、時間制約の中での現場運営について、実体験をもとにお話を伺いました。
また、現場では空気感や表情を見ることが重要であり、それをどう遠隔でも補っていくかという点についても、具体的な事例を共有いただきました。本日のディスカッションが、皆さまそれぞれの現場や組織での取り組みを考える際の参考になれば幸いです。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

本セミナーは、建設DX展の初日、最初の時間帯での開催にもかかわらず、多くの方にご来場いただき、立ち見も出るなど盛況のうちに終了いたしました。
現場のリアルな声と具体的な取り組みに対する関心の高さが感じられるセッションとなり、現場の空気感や人の様子をどう遠隔で共有するかという課題に対し、一つの具体的なヒントになれば幸いです。

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